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結核と非結核性抗酸菌症

結核の現状と新たな予防指針

The present status of tuberculosis and a new guideline for tuberculosis prevention.

山岸文雄

Pharma Medica Vol.30 No.6, 15-18, 2012

Ⅰ.世界の結核
 世界人口の約3分の1の人々が結核菌に感染し,2010年には新たに880万人が結核を発病していると推測され1),結核は世界最大級の感染症である。新規結核患者は2006年以降,減少している。また推定結核罹患率は人口10万対128であり,2002年をピークに緩徐にではあるが減少している。発生患者の2%が日本を含む欧米先進国であるが,残る98%は発展途上国や旧社会主義国で占められている。また地域的にはアジアが59%,アフリカが26%を占めている。結核での死亡者数は145万人であり,このうちには35万人のヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus;HIV)感染者を含んでいる。

KEY WORDS
●結核の現状 ●高齢者 ●ハイリスク者 ●予防指針

Ⅱ.わが国の結核

1.罹患率

 2010年の新登録患者数は23,261人,罹患率は人口10万対18.2であった2)。結核罹患率は1997年から3年連続して上昇したため,1999年には当時の厚生大臣から結核緊急事態宣言が発令された。1999年の罹患率34.6に比較すると,2010年の罹患率18.2は約53%に減少しており,そのスピードは緩やかではあるが減少を続けている(図1) 2)。

なお結核の統計は,1998年から非結核性抗酸菌症を除いた新分類にて行われている。
 罹患率には依然として大きな地域格差が認められている。政令指定都市を含む都道府県別罹患率で,最も高い大阪府の29.9は,最低の長野県の9.1の約3.3倍である。また,関東以東では東京都の23.1以外,罹患率が20以上の道県はないが,関東より西では罹患率が20以上の府県は大阪府を始めとして7府県あり,結核罹患率の西高東低の傾向は相変わらずである。外国籍結核患者の増加傾向は続いており,2010年の新登録患者中,外国籍の者は952人,4.1%であった。このうち20~29歳の新登録結核患者では1,536人中438人と28.5%も占めている。一方,2009年の欧米諸国の罹患率では,米国3.7,カナダ4.3,フランス5.4,オランダ5.7など,10未満の国が多く,それに比較して日本は数倍高く,依然として結核中まん延国といわれている。

2.高齢者結核の増加

 結核患者に占める高齢者の割合は,年々増加している。2010年の新登録結核患者に占める70歳以上の者の割合は51.2%,80歳以上の者の割合は29.7%と著しく高い2)。これら高齢者結核の多くは,結核の高まん延期に感染を受けても発病しなかった者,発病しても自然治癒した者,強力な抗結核薬以外の治療を受けた者などが,長い年月とともに体力が落ち,また余病を併発するなどして,内因性再燃により発病したものと考えられる。高齢者結核が急速に増加した原因としては,人口の急速な高齢化,高齢者の結核罹患率減少速度の鈍化があげられる。この鈍化は,高齢者では結核既感染率が高いことに由来する。2010年の全人口の罹患率は人口10万対18.2であるが,70歳代では38.8,80歳以上の罹患率は84.2である(図2) 2)。

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