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血小板をめぐる最近の話題

(基礎編)血小板と動脈硬化

Role of platelet on atherothrombosis.

盛口睛香浅田祐士郎

Pharma Medica Vol.30 No.5, 21-26, 2012

はじめに
 生活様式の欧米化や高齢化に伴い増加傾向にある心血管イベントは,動脈硬化巣に形成される血栓によって発症する。一般的に,動脈の血栓形成では,その血流の速さからフィブリンが生成されがたく,血流に抗して血管の損傷部位に粘着する血小板が主体の血栓が形成されると理解されている1)。実際に,急性心筋梗塞症例の冠動脈血栓を組織学的に評価すると,多量の血小板が存在し,血栓形成において血小板が大きな役割を担っていることに異論はない。しかし,閉塞性血栓では,血小板とともに多量のフィブリン,白血球や赤血球も数多く混在している2)。
 本稿では,動脈硬化巣(プラーク)と血栓の形態学的特徴および血栓の成長について,特に血小板を中心に概説する。

KEY WORDS
●血小板 ●動脈硬化 ●アテローム血栓症 ●病理

Ⅰ.動脈での血栓形成

 血管内腔は一層の内皮細胞で覆われており,内皮細胞はさまざまな抗血栓分子を産生しているため,健常な動脈内で血液が固まることはない。これまでに,動物実験や血液フローチャンバー系を用いた検討によって,動脈における血栓形成は,以下の過程で進行することが明らかにされている1)。内皮細胞の剥離によって内皮下組織であるコラーゲンが露出すると,血小板の接着因子であるvon Willebrand factor(VWF)が吸着する。血小板は,膜蛋白glycoprotein(GP)Ⅰb/Ⅴ/Ⅸを介してVWFに結合し,さらに,コラーゲンレセプターであるGPⅠa/Ⅱa, GPⅥを介して血小板の粘着が起こる。粘着した血小板は種々の生理活性物質を放出し,血小板の活性化が促進される。最終的に,活性型血小板は膜表面のGPⅡb/Ⅲaを介してVWFおよびフィブリノーゲンと結合し,凝集塊を形成する。特に,血流速度・ずり応力が増加した部位では,VWFとGPⅡb/Ⅲaを介した凝集がより重要である3)。血小板の凝集に続いて,活性型血小板膜上で血液凝固反応が進行し,フィブリン生成が起こり,血小板血栓は壁在血栓として安定化する。しかし,正常の動脈で内皮細胞の剥離が起こることは非常にまれで,通常は動脈硬化巣を素地として起こってくる。

Ⅱ.動脈硬化巣(プラーク)における血栓形成

 健常な動脈壁と異なり,動脈硬化巣(プラーク)では,血小板活性化能の高いⅠ型,Ⅲ型コラーゲンが増加している。また,正常な動脈の内膜ではほとんど発現のない組織因子(Tissue factor;TF:外因系凝固反応の引き金)が大量に発現しており,これらがプラークの破綻に伴う血栓の形成に大きく寄与している4)。
 急性心筋梗塞患者の責任血管から吸引採取された新鮮血栓を観察すると,血栓は常に血小板とフィブリンから構成される混合血栓である。また血小板の凝集塊に一致してVWFが局在しており,先に述べたように血管の狭窄により血流速度・ずり応力が増加した部位では,VWFが血小板凝集に強く寄与することを示している(図1)2)。

 プラークの破綻は,脂質コアを被覆する線維性被膜の断裂による「破裂」と被膜の表層の傷害である「びらん」がある。いずれの場合も,血小板とフィブリンから形成されるが,興味深いことに,両者の比率は多少異なっており,プラーク破裂に伴う血栓では血小板よりもフィブリンの占める割合が高く,血栓サイズも大きいことが多い(図2A)5)。

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