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発達障害の診断と治療・支援をめぐって

発達障害の二次障害をどのように捉えるか;その予防と治療をめぐって

Psychological and behavioral complications of developmental disorders;treatment and prevention.

宮本信也

Pharma Medica Vol.30 No.4, 21-24, 2012

Ⅰ.二次障害とは
 「二次障害」とは,もともとは,脳性麻痺において使用されていた用語である。その意味するところは2つあり,何らかの理由により,①本来ある障害が悪化した状態,あるいは,②新たに生じた別の障害,のどちらかを指して使われていた。①の例としては,麻痺により関節が固くなり(関節拘縮),運動がさらに障害された状態が代表的なものである。②の例としては,脳性麻痺により胸郭変形が生じ,そのために呼吸障害という本来の麻痺とは違う障害が生じたという身体面の問題と,不安や抑うつ状態などの精神面の問題の2つがあげられる。これに対して,発達障害の領域で使われる「二次障害」という用語は,発達障害と関連した心理的ストレス状況を背景として,情緒面・行動面・精神面の問題が生じている状態を意味している。

KEY WORDS
●発達障害 ●二次障害 ●合併症 ●問題行動

Ⅱ.二次障害の背景

 発達障害における二次障害は,小学校高学年つまりは思春期年代から顕著になりやすいという特徴がある。二次障害にみられるこの年齢特徴には意味がある。
 思春期とは第二次性徴が出現し完成するまでの時期をいい,だいたいわが国の中学生から高校生の年代に相当する。この思春期における発達課題の第一は集団同一性,あるいは集団同一視といわれるものであろう。自分が同年代の子ども達からはずれていない,自分は同年代の子ども達と同じである,という意識のことである。みんなと同じ自分を自覚できることで,この年代の子ども達は安心感を得ることができる。
 一方,発達障害児達も多くは,思春期前後になると自分がみんなと違うことに気が付き出す。しかしながら,彼らは,生まれながらに発達障害特性をもって生きてきているので,そうでない状態を自ら意識することがうまくできない。つまり,みんなと違うということはわかっても,何がどう違うのかを自分だけで理解することが困難な状況にある。この状況は,みんなと同じであることで安心感が得られる状態と正反対のものであり,安心感が揺らぐことになる。さらに,思春期までの失敗体験の積み重ねや頻回の被叱責体験から自信や自尊心が低下し,心理的な不安定感が増大していくことになるのである。このことは,発達障害児においては,思春期になって何か特別なストレッサーが外から新たに加わって,子ども達が不安定になるのではないということを意味する。思春期になること自体が自己に向き合う状況につながり,彼らに大きなストレス状況を生み出すのである。
 結局,通常の子ども以上に発達障害のある子どもは思春期に心理面が不安定になりやすくなっており,それまで我慢してきたストレス状況に対する耐性もゆらぎ,二次障害が思春期に生じやすくなると考えられる。

Ⅲ.二次障害としてみられる問題

1.不安定な情緒

 二次障害をきたしている発達障害のある子ども達では,気分のむらが大きい,かんしゃくを起こしやすいなど,情緒的な不安定さが訴えられることが少なくない。しかし,こうした特徴は,思春期の定型発達児においてもよく認められるものでもある。発達障害児と定型発達児の思春期の心の特徴を表1に示した。

自尊心の低下や性衝動を抑えようとする葛藤が乏しいなど,発達障害児にみられやすい特徴はあるものの,多くの心理特性は発達障害児と定型発達児で類似のものが多いことがわかる。発達障害児において情緒的に不安定といわれる状態は,定型発達児と質的に大きく異なるものではなく,思春期の定型発達児においても認められるマイナスの部分が発達障害児では顕著に表面化した状態になっているということができるように思われる。

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