人にとって音を聞き取る「聴覚」は大切な感覚の1つであり,われわれは言葉を聞いて,言葉を話し,コミュニケーションを取っている。聴覚障害,いわゆる難聴に伴う「聞こえない・聞き取れない」という状況は,日常生活において重大なコミュニケーション障害をもたらし,高齢者においては難聴が認知症1)やうつ病2)のリスクになると報告されている。Lancet認知症予防・介入・ケア国際委員会の2024レポートでは,認知症に関与するリスク因子として14の因子が挙げられているが,高LDLコレステロール血症と並んで中年期以降の難聴は最大リスクとして示されており,難聴対策を行うことで認知症例の7%を回避できると報告している1)。難聴は,加齢とともに有病率が上昇する病態であるが,2022年に発表された本邦における大規模調査によると,補聴器による介入が必要な中等度以上の難聴の有病率は70代前半で約25%,80代前半で約50%以上と推定され,人口動態とあわせると高齢者を中心に約2,000万人が中等度以上の難聴であると推算されている3)4)