アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)は認知症を来す最も頻度の高い疾患であり,本邦では2023年まで,AD治療薬としてドネペジル,ガランタミン,リバスチグミン,メマンチンのみが使用可能であったが,これらの薬剤は投与を続けても認知機能低下を抑制できないため,早期投与によってAD病態そのものを修飾して認知機能低下の進行を抑制する疾患修飾療法(disease-modifying therapy:DMT)の登場が期待されていた1)2)。
ADの病理学的特徴としては,アミロイドβ(amyloidβ:Aβ)からなる老人斑,微小管関連蛋白質であるタウ(tau)が異常リン酸化され凝集した神経原線維変化(neurofibrillary tangle:NFT),そして神経細胞死が挙げられる1)-3)。なかでもアミロイド前駆蛋白質(amyloid precursor protein:APP)からβ-およびγ-セクレターゼにより切り出されたAβが異常凝集し,tauとともに神経細胞を傷害する過程がADの病態生理において重要な役割を果たすと考えられている(アミロイド仮説)1)-3)。

