本邦において,高齢化の進展に伴い認知症患者数が増加している。2024年7月にLancet国際委員会は,認知症の改善可能な14のリスク因子を以下のように報告している1);小児期の教育歴,中年期の聴力障害,高LDLコレステロール,うつ,頭部外傷,身体不活動,糖尿病,喫煙,高血圧,肥満,過度なアルコール摂取,高齢期の社会的孤立,大気汚染,視覚障害。これらのリスク因子への介入により,世界の認知症発症の約45%を遅延・予防できる可能性が示唆されているが1),現時点ではこれらの因子に対する介入による認知症発症抑制のエビデンスは十分ではない。近年,フィンランドで行われたFINGER研究を先駆けとして2),認知症の改善可能な複数のリスク因子に同時に介入する多因子介入研究に期待が集まっている。2017年7月には,World Wide-FINGERS(WW-FINGERS)ネットワークが発足し,2019年時点で25ヵ国以上3),2024年7月現在では60ヵ国以上,80以上の研究が参加する全世界的な認知症予防活動に進展している。本邦では,2019年度より「認知症予防を目指した多因子介入によるランダム化比較試験(Japan-multimodal intervention trial for prevention of dementia:J-MINT研究)」が開始された4)5)。本稿では,J-MINT研究の概要と得られた成果について紹介したい。
特集 本邦における認知症の最新疫学・介入研究
②Japan-multimodal intervention trial for prevention of dementia:J-MINT研究
掲載誌
The Curator of Neurocognitive Disorders
Vol.2 No.1 24-29,
2025
著者名
杉本 大貴
/
櫻井 孝
記事体裁
抄録
/
特集
疾患領域
精神疾患
/
神経疾患
/
脳血管障害
診療科目
神経内科
/
老年科
/
精神科
媒体
The Curator of Neurocognitive Disorders
Key Words
認知症
/
軽度認知障害
/
多因子介入
/
予防
/
J-MINT
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

