アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)は,認知症の原因として最も頻度が高い。1906年にAlzheimerによりADの最初の患者であるAuguste Deterが報告1)され,老人斑および神経原線維変化(neurofibrillary tangle:NFT)などの神経病理学特徴が明らかになった。さらに,1992年にADの病態として認知症発症の約20年前から細胞外へのアミロイドβ(amyloid β:Aβ)の蓄積が始まり,その後に細胞内へのリン酸化タウ(p-tau)の蓄積によるNFTが生じ,神経細胞変性に至るという「アミロイド仮説」が提唱された2)。この仮説をもとにAβを分子標的とした疾患修飾薬および発症前段階での診断を可能とするバイオマーカー(biomarker:BM)の開発が進展した。