脳の病的変化は,変性,壊死,腫瘍などによる形態の異常を反映する形態的変化と血流・代謝低下などの機能の異常を反映した機能的変化に大別される。コンピュータ断層撮影(computed tomography:CT),核磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging:MRI)は形的変化を捉えることを目的に行われる。アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)診断において,治療可能な疾患を中心に鑑別する除外診断と,ADに特徴的な所見を確認していく特異診断の双方を念頭に検査を進めていく。慢性硬膜下血腫や脳腫瘍,正常圧水頭症などの治療可能な脳外科的疾患,脳炎や脳症などの内科的疾患,血管性認知症やクロイツフェルト-ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)などを除外する目的でCTやMRIを施行する。ADにおいてCT/MRIでは海馬や嗅内皮質を中心とする側頭葉内側の萎縮と側脳室下角の拡大から始まり,進行すると側頭頭頂連合野,さらには前頭連合野~大脳皮質全体へと萎縮が広がり,後頭葉や小脳は保たれる場合が多いことが典型的な経過と考えられている。Jianpingらの報告1)によると,ADの発症前20年間のバイオマーカー(biomarker:BM)の追跡では,海馬容量の低下は診断の約8年前から始まるとされている(図1)。