アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)は認知症をきたす最も頻度の高い疾患であり,本邦では現在,AD治療薬としてドネペジル,ガランタミン,リバスチグミン,メマンチンが使用可能であるが,これらの薬剤は投与を続けても認知機能低下を抑制できないため,早期投与によってADの病態そのものを修飾して認知機能低下の進行を抑制する疾患修飾療法(disease-modifying therapy:DMT)の登場が期待されている1)。
ADの病理学的特徴としては,アミロイドβ(amyloid β:Aβ)蛋白からなる老人斑,微小管関連蛋白質であるタウが異常リン酸化され凝集した神経原線維変化(neurofibrillary tangle:NFT),そして神経細胞脱落が挙げられる1)。なかでもアミロイド前駆蛋白(amyloid precursor protein:APP)からβ-およびγ-セクレターゼにより切り出されたAβが異常凝集し,神経細胞を傷害する過程がADの病態生理において重要な役割を果たすと考えられている(アミロイド仮説)2)。また,Aβがモノマーから成熟線維に凝集していく過程で,脳内に沈着する最終段階の線維が神経毒性につながると考えられていたが,早期・中間凝集体である可溶性オリゴマーやプロトフィブリルはより毒性の強い凝集体として重要視されている(図1)3)。

