―はじめに,現在わかっている老化のメカニズムについて教えてください.

老化のメカニズムで今興味を持っているのは,エピジェネティックによる老化と,老化細胞についてです.

老化においては,DNAメチル化やヒストン修飾などエピジェネティックな変化が重要な役割を果たすと考えられていますが,DNAメチル化は,CpG配列に生じるシトシン塩基5’位の炭素原子にメチル基が付加される化学的修飾であり,遺伝子の発現調節に関与することが知られています.

これは,1つしかない受精卵がさまざまな細胞系譜に分化する上で欠かせない仕組みですが,メチル化異常はがん抑制遺伝子の不活化を引き起こし,多くのがん種の発症に関与することも明らかとなっています.

また,全容は明らかではありませんが,DNAメチル化は糖尿病やアルツハイマー病といった老化に伴う疾患の病態にも影響を及ぼすことが指摘されつつあります.たとえば,一卵性双生児のゲノム配列は同じですが,生活習慣や生活環境の違いにより,片方だけ糖尿病を発症することは珍しくありません.

このように老化に伴う疾患の多くは,遺伝子に対する環境因子の働きかけ,つまりDNAメチル化をはじめとするエピジェネティックな変化で発症すると考えることができます.