日本では古来より自然災害が頻発しており,国立研究開発法人防災科学技術研究所が提供する「災害年表マップ」によれば,その記録は西暦416年の大和・河内地震にまで遡ることができる1).近年においても,1995年の阪神・淡路大震災,2004年の台風23号および新潟県中越地震,2011年の東日本大震災,2016年の熊本地震,2018年の平成30年7月豪雨,2019年の東日本台風,2024年の能登半島地震など,地震や異常気象に起因する大規模災害が相次いで発生している2)

これらの災害では,いずれも1万棟以上の住宅が被害を受け,多くの住民が避難所での生活を余儀なくされた2-4).避難所では,災害により地域の公衆衛生基盤が著しく損なわれることから,感染症の流行リスクが著しく高まることが予測される4,5).特に,水道や衛生設備のようなインフラの機能不全が長期化した場合,トイレ環境の悪化を介した感染性胃腸炎などの感染症が拡大する危険性がある6)