中国武漢市で2019年12月に確認された新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:COVID-19)は,2004年に出現し,重症急性呼吸器症候群(severe acute respiratory syndrome:SARS)の原因となったSARSコロナウイルスに近縁な新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)によって感染伝播する.WHO(世界保健機関)は2020年3月11日にSARS-CoV-2のパンデミック宣言を行い,感染拡大防止への警鐘を鳴らしたが流行は収まらず,世界的規模の流行をもたらした.予防衛生の強化,緊急事態宣言などによる都市閉鎖,既存承認薬のリポジショニング,症状緩和療法の導入などにより,感染者数のコントロールを行っているが,いまだ制圧には至っていない.
2021年2月より接種がはじまったワクチンは,今後のSARS-CoV-2流行を防ぐ切り札として期待されている.しかし,現在わが国では,英国,ブラジル,南アフリカなどで検出されたSARS-CoV-2変異株が感染の拡大傾向を示し,同時に国内流行の第3波の症例数減少の下げ止まり傾向に見舞われており,ワクチンの効果を疑問視する声が聞こえはじめている.
本稿では,SARS-CoV-2ワクチンの最新情報を提供し,新世代ワクチンの予想される効果などを紹介する.