低ホスファターゼ症(hypophosphatasia:HPP)はアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase:ALP)の活性が低く,骨をはじめとする諸臓器の障害をきたす1).周産期領域においては近年,胎児の骨系統疾患の1つとして疑われ,生後に確定診断され,さらには酵素補充療法2)という画期的な治療法により,予後の改善につながっている.それだけに胎児期の正確な診断のニーズは高まっている.

当科でも軽症から重症まで幅の広い症例を経験してきた.最重症型は胎児エコーでもほとんど骨のエコー像が認められず,重度の羊水過多症を呈して陣痛発来で当科へ搬送されてきた.生後のautopsy imageと臍帯血ALP活性が3U/L,また母親と臍帯血での遺伝子解析によりc.1559del Tの変異が認められ,HPPの確定診断となった.また当院開設当初,致死性の骨系統疾患として中期中絶されていた症例のautopsy imageが数年後に確定診断に至ったこともあった.本症例は2回目の妊娠時に,妊娠20週でやはり重度の骨系統疾患が疑われ来院された.その時点で筆者が参加していた骨系統疾患フォーラム(以下フォーラム)3)で,今回のエコー画像と第1子のautopsy imageをコンサルトしたところ,HPPであるとの診断となり,その後両親に同様の遺伝子変異が認められ,確定診断となった.2回目の妊娠による第1子出産後,ようやく周産期情報,遺伝情報をカウンセリングすることが可能となったのである.また当院の酵素補充療法の症例では妊娠33週において,長管骨の短縮やspur,舌状cupping,脊椎部分欠損,頭蓋骨菲薄化などの所見からHPPの可能性を考えた.本症例では母親のALP値は183であったが,父親のALP値は134とやや低めであった.しかし当時,この値を診断に用いる基準が存在しなかったため,疑わしいという域を出ない状況であった.そのため,同意のもと胎児採血を行い,ALP値33と低値であることから胎児期の確定診断に至った.本症例はその後,生直後から酵素補充療法を行い,現在は予後良好な経過を辿っている.

これらの症例にあるように,エコーや,胎児CTなどの画像診断ではかなり疑う所見が得られるのであるが,確定というところまでは至らないジレンマがいまだ存在している.そこで筆者らは,フォーラム3)に相談のあった胎児四肢短縮症例の転帰と,両親のALPを測定した77例を検討することで,両親のALP測定が胎児診断の補助手段として有効であることを報告したので解説する4)