肺動脈性肺高血圧症(PAH)の病態にBMPR2遺伝子が関与していることは広く認識されている。しかし,その浸透率は約20%と低いことから,PAHの発症にはBMPR2遺伝子異常に加えて,何らかの遺伝因子もしくは環境因子の関与(いわゆるセカンドヒット)が示唆されている。
未修復のDNA損傷はPAHの血管内皮細胞および平滑筋細胞で認められる特徴的な形質である。著者らは一連の研究で,BMPR2が血管内皮細胞の恒常性維持に必要な遺伝子発現とDNA修復機構の両方に重要な役割を果たすことを示してきた1)-3)。しかしながら,血管内皮細胞における継続するDNA損傷とPAHの発症が共通の分子メカニズムで引き起こされているのかどうかについては明らかではない。
そこで本研究で著者らは,未修復のDNA損傷とPAHの発症とを関連づけるメカニズムの解明を目的に以下の研究を行った。

