2022年の欧州心臓病学会／欧州呼吸器学会（ESC/ERS）肺高血圧症診断・治療ガイドラインでは，肺動脈性肺高血圧症（pulmonary arterial hypertension：PAH）に対する治療アルゴリズムが改訂され，“PAH with cardiopulmonary comorbidities”では初期治療として経口薬単剤の使用が推奨された（図１B）１）。2015年の同ガイドラインでは“cardiopulmonary comorbidities”の文言は明記されておらず，WHO機能分類を含むリスク評価に基づく併用療法を基軸とする治療方針が推奨されていた（図１A）２）。これは2022年のガイドラインにおける大きな改訂点の1つであり，本稿では関連用語・概念を整理したうえで，“PAH with cardiopulmonary comorbidities”の問題点や治療上の注意点，今後の課題・展望について論じる。