第3群肺高血圧症(PH)(肺疾患および/または低酸素血症に伴うPH)に対して,2022年欧州心臓病学会/欧州呼吸器学会(ESC/ERS)のPHガイドラインでは「肺動脈性肺高血圧症(PAH)で承認された選択的肺血管拡張薬の有効性を示すデータはなく,これらの薬剤は血行動態,運動能力,ガス交換,および転帰にさまざまな影響を及ぼし,ときには有害な影響を与える可能性がある」とされている1)。そのようななか,米国では間質性肺疾患(ILD)によるPHの治療に吸入トレプロスチニルを用いたプラセボ対照無作為化比較試験が実施され,吸入トレプロスチニルがILDによるPHの患者の運動耐性を改善し,臨床的な悪化を抑制することが示された2)3)。そのため,米国ではfood and drug administration(FDA)で認可され,ILDに伴うPHに対し吸入トレプロスチニルが承認されている。2024年2月現在,本邦でも臨床試験が進行中である。本邦で承認された場合,「ILDに伴うPH」診療はどのように変わるのか?革新的な新薬はそこに注力する医師を増やし,潜在的な症例が見出される。循環器,膠原病,呼吸器と各科にまたがる疾患で,最適症例にいかに有効・安全・適時に本剤を導入するか,今後の課題である。