心肺の合併症がある肺動脈性肺高血圧症[pulmonary arterial hypertension(PAH) with cardiopulmonary comorbidities]は特発性肺動脈性肺高血圧症(idiopathic PAH:IPAH)に対して生まれたatypical IPAHという概念に端を発し,それがPAH全体に広がったと考えていくとわかりやすい。IPAHは若い女性の疾患と考えられてきたが,最近の診断時の平均年齢は60歳代や70歳代とも報告されている1)2)。この傾向は日本においても同様である3)。高齢診断のIPAHは加齢性変化に伴いさまざまな併存疾患をもつため若年女性のIPAHとは異質であり,atypical IPAHと呼ばれている。これをIPAHだけでなくPAHに広く応用したのがPAH with cardiopulmonary comorbiditiesである。2022年の欧州心臓病学会(ESC)/欧州呼吸器学会(ERS)のガイドライン4)では,一部のPAHにおいてcardiopulmonary comorbiditiesの有無をまず評価し,なければ早期併用療法,合併していれば単剤での治療が推奨されている。心肺の合併症がないPAHは,肺循環障害以外の問題点がなく併用療法を阻害する要因がない。一方,心肺の合併症があるPAHは肺循環障害に加え別の問題がある。特に肺血管拡張薬の悪い面が前面に出やすい左心の問題と肺の問題が強調されている。左心に問題があるものをcardiac phenotype(PAH with cardiac comorbidities),低酸素血症が問題となるものをpulmonary phenotype(PAH with pulmonary comorbidities)と呼んでおり,ともに早期併用療法が危険である。ガイドラインでは単剤療法を推奨しているが,これらのphenotypeもあくまでPAHであり肺血管抵抗(PVR)も高いことが多い。心肺合併症へのプレコンディショニングを行ったうえで肺血管拡張薬を用いることが重要であり,単剤で十分なのかは経過をみながら考えるべきだろう。
目でみる肺高血圧症
心肺の合併症がある肺動脈性肺高血圧症の典型的な症例
掲載誌
Pulmonary Hypertension Update
Vol.9 No.2 4-8,
2023
著者名
足立 史郎
記事体裁
抄録
/
連載
疾患領域
循環器
/
呼吸器
診療科目
循環器内科
/
呼吸器内科
媒体
Pulmonary Hypertension Update
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

