慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension:CTEPH)は,器質化した血栓により肺動脈の狭窄や閉塞をきたし,肺血管抵抗(PVR)が上昇し,肺高血圧や右心不全をきたす疾患である1)。難病情報センターのデータによると,日本において2020年度は約4,600人のCTEPHの特定医療費受給者証保持者がおり,年間400人ほど新規に増加している。近年,疾患の認知度とともにCTEPHと新規に診断される患者は増加傾向にあるが,実際にはまだ診断されていない患者も多いと推定される。
現在,CTEPHの治療法として,薬物治療,手術療法[血栓内膜摘除術(pulmonary endarterectomy:PEA)], 経皮的肺動脈バルーン形成術(balloon pulmonary angioplasty:BPA)がある。治療方針を決める際は,CTEPHチーム(PEA経験の豊富な外科医,BPA経験の豊富なインターベンション医,放射線読影医,内科医)によるディスカッションが望ましい2)3)。手術適応と診断されたCTEPHに対しては,PEAが日本循環器学会および欧州循環器学会・呼吸器学会(ESC/ERS)のガイドラインでclass Iで推奨されている3)。本稿においては,手術適応外のCTEPHのBPAと薬物療法について述べる。

