乳癌を含むほとんどの固形癌(carcinoma)は,癌細胞とそれを支持する間質細胞から構成されている。病理学的に間質は細胞外マトリックス(extracellular matrix:ECM),線維芽細胞,血管,リンパ球,マクロファージなどを中心とする炎症性細胞などから構成されており,従来は単に癌細胞を納める家屋か精々支持組織くらいの位置づけしかなかった。しかし,近年この間質細胞と腫瘍細胞との相互作用(tumor-stromal interactions)は癌化,癌の進展,浸潤,転移などほとんどの癌細胞の生物学的特性に密接にしかも活発に関わっていることが再認識され,大きな関心を集めている1)-6)。特に悪性腫瘍局所の組織環境では,たとえば創傷治癒の過程でみられるような炎症性細胞浸潤,血管増殖,巨細胞による壊死に陥った細胞群の生体内からの除去のような一連の間質反応の過程が秩序立って進むことはむしろ例外的で,病理学的にはこれらの反応が調和が取れないで進む現象が,癌細胞そのものの生物学的動態に大きな影響を与えることから近年非常に注目を集めている。
「KEY WORDS」Treg,Vasohibin-1
「KEY WORDS」Treg,Vasohibin-1