「はじめに」乳癌治療は,局所療法(外科手術,放射線治療)と,全身治療(内分泌療法や化学療法,抗HER2療法などの薬物治療)の両輪の上に成り立っている。手術のみで根治できる症例もあるが,すでに早期の段階から全身微小転移を起こす“全身病”の状況を,初期治療決定の際には鑑別できる手段をもたないために,浸潤癌の多くは全身病として捉えられ,再発予防の薬物療法が勧められるのが基本である。特に化学療法においては,NSABP B-18試験から,術前化学療法は従来の手術→術後化学療法と治療成績が変わらないこと,術前化学療法による腫瘍縮小により乳房温存率が向上すること,病理組織学的効果により術後予後が異なることが証明され,その後,術前化学療法を用いた臨床試験が広く行われるようになった1)。乳癌はエストロゲンレセプター(ER)とHER2の発現状況により,ホルモン依存性のER陽性乳癌,HER2陽性乳癌,両者の影響を受けないトリプルネガティブ乳癌(TNBC)に大別される。

●本企画「誌上ディベート」は,ディベートテーマに対してあえて一方の見地に立った場合の議論です。問題点をクローズアップすることを目的とし,必ずしも論者自身の確定した意見ではありません。

論点整理/南博信
・「代替指標となる」とする立場から/増田慎三
「代替指標にはならない」とする立場から/荒木和浩/伊藤良則