うつ病の有病率の増加には遺伝要因やストレス要因だけでなく,社会経済的要因を含む環境要因が関係することが明らかになっています。一方,うつ病の予後と社会経済的要因との関連性は多くの精神科医にとっての関心事であるにもかかわらず,これを検討した研究は今までには不十分と言わざるを得ません。
今回取り上げる系統的レビューと臨床試験の個別被験者データ(individual participants data;IPD)を用いたメタ解析は,治療の種類にかかわらず,プライマリケアにおける成人うつ病患者の予後と社会経済的要因(雇用状況,経済的負担,住居状況,教育水準)との関連性について,既知の臨床的予後要因を考慮したうえで検討したものです1)。社会経済的要因とうつの発症の関連を探索した系統的レビューは多いですが,前者とうつの予後との関連をみたレビューは限られており,また単一の抗うつ薬とうつの予後をみたレビューはあるものの,抗うつ薬の種類を問わず社会経済的要因と予後との関連性を検討した報告はなく,今回ご紹介する研究が初となります。その解析手法,プライマリケアへの一般化可能性も含めて注目すべき研究です。