バクテリアから哺乳類に至る多くの地球上生物の活動には,概日リズムと呼ばれる1サイクル約24時間の周期性が観察される。哺乳類では,睡眠/覚醒サイクル,体温および血中ホルモン濃度などが概日リズムの制御下にある。これらのリズムを駆動するために,脳内視床下部にある視交叉上核(suprachiasmatic nucleus;SCN)が示す,自律的な内因性の神経活動リズムが必須である1)-3)。昼行性・夜行性動物で,時計中枢としてのSCNの機能に違いはみられない。個々のSCN細胞が示す神経活動リズムは,以下に説明する一群の時計遺伝子が示す発現リズムの支配下にある。概日時計の重要な機能として,SCNは概日リズムを外部の明/暗サイクルと同期させることができる。一方,ショウジョウバエでは,やはり脳内にあるlateral neuronと呼ばれる神経細胞群が概日時計の中枢として機能している4)。そして,その細胞内で時計遺伝子が示す発現リズムが行動などの概日リズムの生成に必須であることを明らかにしたことで,2017年度のノーベル生理学・医学賞はBrandeis大学のJeffrey Hall,Michael RosbashとRockefeller大学のMichael Youngの3博士に授与された5)。彼らの研究が体内時計の解明に決定的に重要であったということに異論をはさむつもりは毛頭ない。ただし,1990年代の熾烈な競争のなか,ショウジョウバエと哺乳類で追いつ追われつ見出された時計遺伝子とその発現制御機構がほぼ相似であったことが,彼らの受賞に強い追い風となった側面を否定はできない。