─まずは,先生が精神科医となられた経緯と,当時の精神科診療の様子を教えてください。
慶應義塾大学医学部卒業後,進路を選択するにあたっては,内科領域における専門性の高さや,将来的なニーズが高いと予測される点に魅力を感じ,精神科の道を進むこととしました。
その後,トロント大学精神科にクリニカルフェローとして留学していた2年間を除き,これまでずっと,慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室の精神薬理研究室で研究を行うかたわら,井之頭病院で多くの患者さんの診療にあたってきました。
井之頭病院は精神科単科病院であり,診療対象の中心となるのは自ずと統合失調症の患者さんです。私が精神科医師となった1998年当時は,抗精神病薬の多剤併用療法,大量療法が当然のこととして行われていました。
入院患者さんのなかには,過鎮静による静脈血栓症や,副作用としての致死性不整脈などをきたす方も珍しくなく,新規抗精神病薬の単剤治療が可能となった現在からすれば,ややいきすぎた薬物療法が常態化していたともいえます。