近年の血友病治療の進歩はめざましく,半減期延長製剤1)やバイスペシフィック抗体2)の登場により,従来の血液凝固因子製剤による補充療法の欠点は次々に克服されつつある.しかし,患者QOLの観点からは,やはり恒久的に体内で第VIII(IX)因子が産生されるような治療法の確立が望まれていることも事実である.
FVIII,FIXともに産生臓器は肝臓であることから,肝臓移植が根治治療となり得るが3),ドナー不足の問題が大きな障害である.また肝細胞移植も試みられているが,肝細胞の採取・増殖の手法は煩雑であり,移植に十分な細胞量を得ることは困難である.そこで多能性幹細胞を用いた細胞治療が注目されている.多能性幹細胞とは,個体を構成するすべての組織細胞に分化する能力(pluripotency)をもつ幹細胞のことであり,事実上無制限に増殖可能であることから,ドナーが不足しがちな移植医療の解決策になり得る.多能性幹細胞にはES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞)とiPS細胞(induced pluripotent stem cell:人工多能性幹細胞)がある.ES細胞は受精卵から作製するという倫理的な問題を孕んでおり,今後の臨床応用にはiPS細胞が中心的役割を果たしていくものと思われる.しかし,ES細胞研究の知見はiPS細胞研究の基盤となるものであり,ES細胞研究の重要性が損なわれたということではない.
筆者らは幹細胞治療のターゲットは血友病Aであると考えており4),本稿では誌面の都合上,ES細胞・iPS細胞の血友病A治療に関する研究状況,および今後の課題について述べる.
FVIII,FIXともに産生臓器は肝臓であることから,肝臓移植が根治治療となり得るが3),ドナー不足の問題が大きな障害である.また肝細胞移植も試みられているが,肝細胞の採取・増殖の手法は煩雑であり,移植に十分な細胞量を得ることは困難である.そこで多能性幹細胞を用いた細胞治療が注目されている.多能性幹細胞とは,個体を構成するすべての組織細胞に分化する能力(pluripotency)をもつ幹細胞のことであり,事実上無制限に増殖可能であることから,ドナーが不足しがちな移植医療の解決策になり得る.多能性幹細胞にはES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞)とiPS細胞(induced pluripotent stem cell:人工多能性幹細胞)がある.ES細胞は受精卵から作製するという倫理的な問題を孕んでおり,今後の臨床応用にはiPS細胞が中心的役割を果たしていくものと思われる.しかし,ES細胞研究の知見はiPS細胞研究の基盤となるものであり,ES細胞研究の重要性が損なわれたということではない.
筆者らは幹細胞治療のターゲットは血友病Aであると考えており4),本稿では誌面の都合上,ES細胞・iPS細胞の血友病A治療に関する研究状況,および今後の課題について述べる.

