かつて精神医学のなかには,内因性うつ病は心神喪失,抑うつ神経症は完全責任能力というように病因論に基づいて刑事責任能力を判断する考え方もあった.しかし,その当時でも法律家は病因論的分類だけで刑事責任能力を決定することはなかった.近年では精神医学のほうが病因論的分類を用いなくなってきていることも手伝って,いっそう個別のケースの症状と犯行の関係を吟味して判断するようになっている.その考え方については別に紹介している1).ここではあらためて刑事責任能力の法律上の考え方を確認したうえで,うつ病患者の刑事責任能力の判断方法について解説する.