アルコール使用障害の治療目標設定に際し,断酒と減酒のどちらを選択すべきかについては,最近のメタ解析,システマティックレビューによると同等に有効であることが示され,目標の選択に患者自身が関与したほうが,やる気や自己効力感が高まり,良好な転機と相関するようである。一方で治療に対する障壁としては,恥の感覚や失敗による自尊心喪失の恐怖が強く,断酒の提示は患者にとって,治療者が想像する以上に敏感な事柄で,否認をきたしがちである。今後はかつてのパターナリスティックなあり方ではなく,治療者と患者の共同意思決定(SDM)での目標設定が重要となってくるが,その一つの方法として,現在,当院外来で行っている2週間の試験的断酒を設けた際の身体依存の程度を指標として,ナルメフェンを用いた減酒治療導入の可否を判断する新たな取り組みについて紹介したい。