新型コロナウイルスの感染拡大によって,酒類消費市場も大きな打撃を受けた。世界保健機関(WHO)はパンデミック宣言後,感染拡大下における飲酒による予防効果の否定やアルコールを含む依存性物質への注意,アルコールの有害な使用に対する注意を発信した。各国レベルでは移動の制限や社会的距離を保つために飲食業を含むホスピタリティ分野での制限が広く行われた。

これらの影響を受け,2020年の酒類市場は世界全体では対前年で約10%の縮小,日本でも約6%の数量減となったと思われ,パンデミック宣言以前の規模への回復には数年を要するとみられている。一方で,新型コロナウイルスにより,消費者の生活習慣や消費行動の変化が加速しており,それに合った製品カテゴリーや販売チャネルは大きく伸びている。 今後ともWithコロナで,人々の健康に対する意識やそのなかでお酒との付き合い方も大きく変わっていく可能性がある。同時にこの状況の下により,人間社会における飲食を介したコミュニケーションの重要性が再認識されたことも確かであり,酒類業界としてもポストコロナでのお酒の役割や価値を真摯に考える機会として捉えたい。