女性の飲酒は全体としては男性より少ないが,特に若年者で増加傾向が顕著である。女性は男性よりアルコールによる健康被害を受けやすく,アルコール関連肝疾患(alcohol-related/-associated liver disease:ALD)の進行・増悪が女性では男性より少量・短期間の飲酒でも惹起されることが,多くの疫学調査から明らかになっている。臓器障害に性差が生じるメカニズムとしては,アルコール代謝の特性に加えて,自然免疫系応答の違いなどが示唆されている。またその他,女性の過剰飲酒に伴ってみられる問題として,性腺機能異常や骨粗鬆症の悪化,乳がんリスクの増大などが挙げられる。アルコールの適正摂取を考える上でも,男女の身体的特性に十分配慮した社会的取り組みが重要である。