1998年に急増し3万人を超えた日本の自殺者は,その後,14年にわたり同様の統計が続いていたが,その間に自殺対策基本法が制定され,自殺総合対策大綱が閣議決定されるなど,自殺対策は国や地方自治体をあげてのいわば国策となっていった。自殺者に占める精神疾患罹患の割合は非常に高く,WHOの自殺対策ガイドラインではアルコール依存症とうつ病が同等に扱われている。アルコール依存症の治療にかかわっていると,自殺既遂に至ったケースに出会うことも多く,これは主治医として忘れられない辛い体験となる。本報告では,Joinerらによる自殺の対人関係理論1)に基づき,筆者が経験したアルコール依存症患者の自殺既遂例における自殺リスク評価とその介入について考察してみたい。