「はじめに」欧米では膵頭十二指腸切除に減黄処置を行うことは,術後合併症の頻度を増大させると考えられている1)。一方本邦では術前減黄は必須であり,従来PTBD(percutaneous transhepatic biliary drainage)が広く行われてきたが,非胆管拡張例の手技的な困難性,瘻孔再発の問題から,ERBD(endoscopic retrograde biliary drainage)が行われるようになってきた。しかし治療的ERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography)による術前ドレナージは,必ずしも安全ではなく,重症膵炎を含め致命的な合併症が報告されている2)。術前ドレナージに何を選択するかの前に,“術前ドレナージが必要か?”という疑問は,原らが指摘するとおりである。黄疸により食欲低下,全身倦怠感のある患者さんに高侵襲な手術を行うことは躊躇されるし,肝機能障害が高度の患者さんに対する全身麻酔を嫌がる麻酔科医も多い。

ENBDを選択する立場から/大木克久 ほか
ERBDを選択する立場から/原和生 ほか
・各論を総括して/島田和明