「はじめに」切除不能膵癌ではその20%に十二指腸閉塞をきたすと報告されている1)。これに対して,従来は胃腸吻合術(バイパス術)が行われてきたが,2000年代前半より十二指腸ステント術の報告が見られるようになってきた2)。そして,2010年4月より内視鏡的十二指腸ステント挿入術が上部消化管閉塞に対して保険収載となった。十二指腸ステントはバイパス手術と比較して低侵襲であることから膵癌による消化管通過障害に対しても今後の普及が期待される。しかし,ステント術とバイパス術の適応の違いやその優劣についてはいまだ議論の余地がある。膵癌診療ガイドライン2013年版3)では,消化管ステントとバイパス術の選択については,予後が長期と予想される場合はバイパス術を,短い場合はステント留置を推奨するとしているが,予後予測の困難さも含めそのすみ分けはいまだ明確でない。今回,膵癌による消化管狭窄に対して,症例によってはバイパス術を行うという立場から我々の意見を述べる。

全例ステント治療とする立場から/大牟田繁文/前谷容
・症例に応じてバイパス術も行う立場から/杉浦禎一/上坂克彦
各論を総括して/山口幸二