「はじめに」欧米では,悪性幽門・十二指腸閉塞の原因疾患として膵胆道癌が多く,特に膵癌は最も多い原因疾患となっている。膵癌による悪性消化管閉塞の発生頻度は1980~1990年代では20%と報告されていたが1)2),米国からの最新の報告によれば3),その発生頻度は38%と倍増傾向にある。本邦でも膵癌は増加傾向にあり4),従来と比較して悪性消化管閉塞に遭遇する頻度の増加が予想される。膵癌の予後は他の癌と比較して短期間であり5),消化管閉塞を来したケースの生存期間は12週間である6)。ステント治療の特徴として,短期成績が良好なため7)-9),膵癌の予後の問題もあり,Maireらは10)切除不能膵癌に対するpalliative therapyのreviewで悪性消化管閉塞に対してステント治療を推奨している。一方,膵癌による悪性消化管閉塞は癌の進行に伴い胃十二指腸のみならず,大腸にも発生することが報告されており11),このようなケースにおいてもステント治療は有効なオプションの一つである。本稿では全例ステント治療とする立場からステント治療のメリットを概説する。

・全例ステント治療とする立場から/大牟田繁文/前谷容
症例に応じてバイパス術も行う立場から/杉浦禎一/上坂克彦
各論を総括して/山口幸二