「はじめに―心不全における浮腫の解除に何を求めるのか?―」肝不全や腎不全など心臓以外の疾患に起因した浮腫は,腹部膨満や全身浮腫といった“目にみえる”症状・徴候が治療標的となる。心不全においても,肺水腫の軽減などの“目にみえる”管理に留意が払われてきた。しかし,このような血行動態の改善が,必ずしも予後を改善させない事実も強調されてきた。強心薬がその代表である。強心薬によりむしろ神経体液性因子が慢性進行性の病態を形成し,その過刺激をACE阻害薬やβ遮断薬により抑制することで“目にみえない”予後を改善させた。浮腫を軽減させる“目にみえる”治療は,半ば軽視されてきた四半世紀だったかもしれない。しかし,近年この旗色が変わりつつある。少しでもうっ血が残存すると,心不全再入院率が上がるとの報告がなされた(図1)1)。つまり,“目にみえる”うっ血解除(decongestion)は,“目にみえない”心不全予後の改善と関連するのである。さらに,身体所見上うっ血がとりきれている症例でさえ,短期再入院率が2~3割に及ぶという1)。この際に着目すべきは,うっ血徴候が乏しくとも血漿脳性Na利尿ペプチド(BNP)が上昇する症例が少なくない点である。
・論点/佐々木成
・ループ利尿薬増量の立場から/賴建光
・多剤併用の立場から/猪又孝元
・論点/佐々木成
・ループ利尿薬増量の立場から/賴建光
・多剤併用の立場から/猪又孝元