抗HIV療法(anti-retroviral therapy;ART)の進歩により、HIV陽性者の生命予後は飛躍的に改善している。しかしながら、強力なARTによっても体内のHIVを完全に除去することはできず、HIV感染症の根治は得られていない。
近年、血液悪性疾患を合併したHIV陽性者に対する同種造血幹細胞移植(hematopoietic stem cell transplantation:HSCT)によって、HIV感染症が治癒したと考えられる症例が報告されている(表1)1)-5)。これらの症例はすべて、CCケモカインレセプター 5(CCR5)をコードする1,055塩基対のうち794番目から825番目の32塩基対が欠失したΔ32のホモ接合型(CCR5Δ32/Δ32)をドナーとしたHSCTを受けている。CCR5は、HIV-1が宿主の細胞に侵入する際にCD4+分子とともにコレセプターとして働き、主に初期感染に関与するため、CCR5Δ32/Δ32をもつ人はCCR5指向性のHIV-1に自然耐性をもっていると考えられている6)。北欧では約10%がCCR5Δ32のヘテロ接合型変異をもっているが、ホモ接合型変異をもっているのは1%前後であり、世界的にはさらに少なく地域によってはほとんど存在しない7)。
本稿では、血液悪性腫瘍などの基礎疾患のあるHIV-1陽性者に対して、CCR5Δ32/Δ32の臍帯血移植を行う研究(IMPAACT P1107)、およびその研究によりHIV-1の寛解を達成した症例についての論文を紹介する。

