新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2年以上の経過で「受け入れ可能な日常疾患」になりつつある。感染対策におけるワクチンの重要性はCOVID-19の対応においても明示された。2年以内にmRNAワクチンが開発されたことは驚異であった。感染が社会に与えた衝撃の重さと蓄積された技術の成果と考えられるが,それと比較しHIV感染症におけるワクチン開発では「困難さ」は際立っている。基本は,そもそもCOVID-19では自然治癒が90%以上で期待されるが,HIV感染症ではelite controllerと呼ばれる擬似的治癒は1万人に1人程度と考えられている。もともと「治る可能性のない」疾患へのワクチンという人類の歴史においても壮大な試みである。
COVID-19時代でNew England Journal of Medicine誌で報告されたHIVに関する報告は少なかったが,その1つは「Vaccine Efficacy of ALVAC-HIV and Bivalent Subtype C gp120–MF59 in Adults」であった1)。これはHIV感染症に対するカナリアポックス蛋白HIVワクチンの報告であった。サブタイプCの2種類の株(TV1.C,1086.C)を含め,アジュバントとしてMF59が使用された。投与回数は6回(0,1,3,6,12,18ヵ月目)であった。結果は24ヵ月の追跡期間中に,HIV罹患者はワクチン群138例(2,704例中)とプラセボ群133例(2,700例中)であった。HIV-1感染が診断されたハザード比は1.02(95%信頼区間〔CI〕;0.81〜1.30, P=0.84)と有効性は見出せなかった。これまで以上に劇的な技術の進歩が必要とされることを示唆する結果であった。