「はじめに」四肢の切断後においても失った四肢があたかも存在するように感じる「幻肢」という現象は,フランスの外科医Ambroise Pareによって16世紀にはすでに報告がなされている(しかし,この時点では,まだ「幻肢」という言葉は使われていない).Ramachandranによれば,幻肢という言葉を初めて用いたのはアメリカのフィラデルフィアの医師Silas Weir Mitchellで,南北戦争後のことであった1).このように,幻肢は古くから知られている現象であるにもかかわらず,幻肢とそれに付随する痛みである幻肢痛の発症機序はいまだにその多くが謎に包まれており,多くの患者を苦しめている.1990年代に入り,PETやfMRIなどヒト脳活動を非侵襲的に計測できる機器の登場によって,幻肢痛患者における脳活動が検討できるようになり,幻肢痛患者の脳内では一次体性感覚野(SI)に特徴的な体部位局在の変化が生じていることが明らかになった.また,SIの体部位局在の変化の程度と幻肢痛の強度とが相関することから,SIにおける体部位局在の変化が幻肢痛の主たる原因であると考えられている.しかし,このモデルとは矛盾する結果も近年報告されており,幻肢痛の発症機序について再考が求められている.