「Summary」 痔瘻癌は痔瘻が癌化したもので, 痔瘻そのものが難治性で, 長期化することが多いことから, その早期診断・早期治療が困難な場合が少なくない. 痔瘻で10年以上経過例, 疼痛や硬結の発生, mucin様分泌, 他に肛門管に腫瘍なし, などの場合痔瘻癌を疑い, 除痛下に細胞診や生検(EUA)を行う. 画像診断ではMRIにおけるT2強調画像にて痔瘻癌の粘液湖部分が顆粒状の強い高信号域の集合として描出され, 診断と浸潤の広がりの判定に有用である. 治療は局所再発防止のために想定以上の剥離面の確保が重要で, 広範囲浸潤例では広範囲切除を伴ったAPR, あるいは骨盤内臓全摘術(TPE)が行われ, 広範な皮膚切除に伴う欠損に対しては有茎皮弁あるいは筋皮弁を用いた再建が必要となる. 予後はStage IIIにおいて5生率が29.0%と不良である. 「はじめに」 痔瘻癌は肛門科診療においてよく遭遇する痔瘻が慢性化し, 癌化したものである.