アンジェルマン症候群(Angelman syndrome:AS)は,重度知的障害,てんかん,失調性歩行,容易に引き起こされる笑いなどを特徴とする症候群である1,2).原因遺伝子であるubiquitin-protein ligase E3AUBE3A)は,ユビキチン蛋白リガーゼの1つであり,標的蛋白をユビキチン化する.ユビキチン化された蛋白はプロテオソームに運ばれ,分解を受ける.したがって,UBE3A蛋白が欠損すると,標的蛋白が過剰となり細胞機能が障害される.ここで,UBE3Aは神経細胞において母由来アレルのみが発現するインプリンティング遺伝子であり,そのため,母由来アレルの変異のみが疾患発症に至る特徴を有している.

このようにASは原因遺伝子,責任蛋白が同定されており,その機能が明らかになっている.そして,ASの神経病態として,経験依存的シナプス可塑性が関与していることが解明されている.そのため,ASは出生後に治療を行うことで,神経機能が改善することが期待され,神経発達症のなかで,遺伝子を対象とした治療法開発のよい対象疾患と位置付けられる.実際,すでにヒトを対象としたアンチセンス核酸治療の臨床試験が始まっている.

本稿では,ASの分子病態と治療法開発について概説し,神経発達症に対する治療法開発についての展望を述べたい.