「Summary」リンパ循環は組織の余剰水分を排出する機能を有しているが, リンパ浮腫は単純にドレナージルートの機械的障害によって発症するものではなく, リンパ管に生じる慢性進行性の病理学的変性の総和として発症する. 組織の線維化はリンパ浮腫を進行させ, 蜂窩織炎や脂肪の蓄積はこれを助長する. これらの詳細なメカニズムはいまだ不明ではあるが, リンパに含まれる炎症性細胞と慢性炎症の関与が強く疑われる. リンパ循環に関する分子生物学的報告も散見され, われわれは肝細胞増殖因子(HGF)によるリンパ管新生療法が新しい治療法となりうることを報告した. この分野での, 生物学に立脚したブレークスルーが期待される. 「はじめに」紀元前5世紀に, ヒポクラテスがリンパについてはじめて記述して以来, リンパ学は多くの試みがなされてきたがいまだ未解決な事項が多く残されている. これは, リンパ循環がきわめて個体差が大きく多様であり, リンパ流そのものが一定ではなく外因によって大きく変動することや, リンパ循環を再現性をもって正確に評価する方法をもたないことに起因する.
特集 リンパ浮腫の臨床Up-To-Date
リンパ浮腫の病態生理
掲載誌
Angiology Frontier
Vol.12 No.2 17-22,
2013
著者名
齊藤 幸裕
記事体裁
抄録
疾患領域
循環器
/
血液
診療科目
心臓血管外科
/
循環器内科
/
血液内科
媒体
Angiology Frontier
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。