この世の中は,国民が納得できるような科学的な公正な判断とその実行が常に求められるところであり,レギュラトリーサイエンスはそのための切り札の手法と考えます。薬事の世界での登場は,人の命と健康にかかわる有効性と安全性,品質の定かでない薬の存在が問題になっていた時代で,それが喫緊の課題として科学的に規制を行うことが求められていました。そこで,科学的な薬事規制の定義の確立を目指して国立衛生試験所の副所長に就任されたばかりの故 内山充博士1)は1987年に「レギュラトリーサイエンス」という言葉を世界で初めて薬事の領域で提唱されました。その根幹は,「科学技術進歩の所産をメリットとデメリットの観点から評価・予測する方法を研究し,社会生活との調和の上で,最も望ましい形に調整(Regulate)すること」とされ,前者は「評価科学」とされ,後者は「行政科学」と定義されました。レギュレーションは,そのまま訳すと「規制」となります。「規制」だとブレーキの印象が強すぎます。レギュレーションには,車でいえば「ブレーキ」もあり,「アクセル」もあり,「ハンドル」もあります。そこで,「規制の科学」ではなくこの「調和の科学」の意味を伝える目的で「レギュラトリーサイエンス」という言葉を内山先生はそのままお使いになりました。このレギュレーションには,その正しい理解と運用が求められるところです。それは何かというと,正しい判断に基づく調和であると思います。人類のため,社会のためになるかどうかの倫理的な判断は最も大事にされるところと考えます。したがって,この意味をまず十分に納得した上でこの言葉を運用して欲しいものと考えます。
THE COMMENTARY
レギュラトリーサイエンス―その運用とその世界の拡散―
掲載誌
再生医療
Vol.19 No.4 33-36,
2020
著者名
近藤達也
記事体裁
抄録
疾患領域
再生医療
媒体
再生医療
※記事の内容は雑誌掲載時のものです。

