柏木(司会) 新型コロナウイルス感染症COVID-19は全世界で2,000万人の感染者と73万人の死亡者を出す猛威を振るっています.わが国では米国などのように感染者数は多くなかったのですが,最近再び新規感染者が増加傾向にあり,全国的な広がりをみせています.本日は,この感染症の臨床像や予防対策について,専門家の先生方に詳しくお話をうかがいたいと思います.
まず,潜伏期間はどのくらいなのでしょうか.1日の感染者数が過去最高になると,すぐ14日前に一体何が起こっていたのかという話になるのですが,これは間違っているのではないかと感じていたものですから,確認させてください.
松本 はじめのうちは12.5日まで,あるいは14日までなど,さまざまな意見がありました.おそらく,長くておよそ2週間くらいなのですが,実際には10日以上後に発症する例はあまりなく,平均で5日くらいが一般的だと思います.
柏木 やはり,14日というのは最長の期間なのですね.次に,無症候性感染者というのは,どのような人たちなのでしょうか.ある人は肺炎を起こし,ある人は症状がないまま14日くらいで消えてしまうのはなぜですか.
松本 若い人のほうが無症候になりやすい傾向はあると思います.ただ,症例を持ち寄って検討してみると,症状はほとんどないにもかかわらず,CTでは肺に淡い影がある場合もありますので,ウイルスの存在だけでなく,どの程度症状の出現につながるような炎症を伴うかによって影響を受けるのではないかと思います.
柏木 藤田先生,肺にウイルスがいるのに,なぜ無症候性感染者がこれほど出るのでしょう.
藤田 インフルエンザでも10%は無症候だといわれていますし,COVID-19は,きわめて重篤になる例から軽症例まで,症状の幅がとても広い感染症なのだろうと思います.
厚生労働省の『新型コロナウイルス感染症診療の手引き』に作成委員として携わりましたが,疾患の経過をみるとほとんどが軽症であり,感冒様症状,味覚障害,嗅覚障害などの症状までで治癒します.しかし,そのうちの約2割の人には,呼吸困難や咳,痰の症状が表れて肺炎症状が増悪し,入院に至ります.そしてそのうちの5%がICUに入り,死亡率は2~3%といわれています.インフルエンザの死亡率は0.1%以下であり,この差は大きいと思います.われわれ臨床医にとって最も困るのは,誰が悪くなるのかが全くわからないところです.40代,50代,60代は要注意ですが,例えば40代でも悪化しない人と急に悪化する人がいて,予測ができません.
不思議なのは,年齢が上がるほど重症になる比率が増えるところです.これはおそらく,通常の免疫反応ではなく,dysimmuneというべき過剰な反応が,年齢が上がるにしたがって強くなるためではないでしょうか.感染症としての症状に,生体のウイルスに対する反応も加わって,臨床像として表れる印象をもっています.
まず,潜伏期間はどのくらいなのでしょうか.1日の感染者数が過去最高になると,すぐ14日前に一体何が起こっていたのかという話になるのですが,これは間違っているのではないかと感じていたものですから,確認させてください.
松本 はじめのうちは12.5日まで,あるいは14日までなど,さまざまな意見がありました.おそらく,長くておよそ2週間くらいなのですが,実際には10日以上後に発症する例はあまりなく,平均で5日くらいが一般的だと思います.
柏木 やはり,14日というのは最長の期間なのですね.次に,無症候性感染者というのは,どのような人たちなのでしょうか.ある人は肺炎を起こし,ある人は症状がないまま14日くらいで消えてしまうのはなぜですか.
松本 若い人のほうが無症候になりやすい傾向はあると思います.ただ,症例を持ち寄って検討してみると,症状はほとんどないにもかかわらず,CTでは肺に淡い影がある場合もありますので,ウイルスの存在だけでなく,どの程度症状の出現につながるような炎症を伴うかによって影響を受けるのではないかと思います.
柏木 藤田先生,肺にウイルスがいるのに,なぜ無症候性感染者がこれほど出るのでしょう.
藤田 インフルエンザでも10%は無症候だといわれていますし,COVID-19は,きわめて重篤になる例から軽症例まで,症状の幅がとても広い感染症なのだろうと思います.
厚生労働省の『新型コロナウイルス感染症診療の手引き』に作成委員として携わりましたが,疾患の経過をみるとほとんどが軽症であり,感冒様症状,味覚障害,嗅覚障害などの症状までで治癒します.しかし,そのうちの約2割の人には,呼吸困難や咳,痰の症状が表れて肺炎症状が増悪し,入院に至ります.そしてそのうちの5%がICUに入り,死亡率は2~3%といわれています.インフルエンザの死亡率は0.1%以下であり,この差は大きいと思います.われわれ臨床医にとって最も困るのは,誰が悪くなるのかが全くわからないところです.40代,50代,60代は要注意ですが,例えば40代でも悪化しない人と急に悪化する人がいて,予測ができません.
不思議なのは,年齢が上がるほど重症になる比率が増えるところです.これはおそらく,通常の免疫反応ではなく,dysimmuneというべき過剰な反応が,年齢が上がるにしたがって強くなるためではないでしょうか.感染症としての症状に,生体のウイルスに対する反応も加わって,臨床像として表れる印象をもっています.