「はじめに」1型糖尿病は,T細胞を中心とするリンパ球浸潤(膵島炎)により膵β細胞が破壊され,絶対的インスリン欠乏に至って発症する“β細胞を標的とする臓器特異的自己免疫疾患”である。このことはすなわち,1型糖尿病患者の体内に,β細胞由来の自己抗原を標的とする自己免疫性T細胞,すなわち“β細胞特異的T細胞”が存在することを意味している1)。本来,生体内には自己抗原を認識して攻撃する自己免疫性T細胞は排除される仕組みが備わっており,β細胞特異的T細胞は存在しないはずである。この仕組みは「中枢性免疫寛容」と呼ばれ,T細胞の成熟過程で「胸腺」において行われる2)。1型糖尿病における膵島炎発症の契機となる主要な自己抗原は,β細胞から分泌されるインスリンそのものであることが報告されている3)4)。つまり,1型糖尿病の発症は,自己抗原としてのインスリンに対する「中枢性免疫寛容の破綻」に始まると考えられ,その舞台である「胸腺」は,β細胞特異的自己免疫疾患である1型糖尿病の標的組織を決定づける重要な役割を演じているといえる。
「Key Words」1型糖尿病,胸腺,インスリン,MafA
「Key Words」1型糖尿病,胸腺,インスリン,MafA

