はじめに  「骨は生きている」というフレーズは,25年以上前に「骨の科学」(医歯薬出版 1985年)のなかで須田立雄先生(現埼玉医科大学客員教授)が用いておられたものである.筆者が大変感銘を受け,その後,骨代謝研究に深くかかわるきっかけとなった言葉でもある.新米の整形外科医として患者に接しているなかで,骨折治癒や変形矯正などといったダイナミックな骨改変の過程を通じて,骨が生きていることを実感していたからである.それから四半世紀を経て,今では「骨が生きている」のは当然のことであり,むしろ全身の臓器が正常に機能するために,そして生を営むために骨組織がいかなる役割を演じているのかが注目される段階になっている.  骨芽細胞や破骨細胞の分化メカニズムは分子レベルで明らかにされ,骨代謝を制御するさまざまな因子も明らかにされた.これまで謎であった骨細胞の役割についての知見も近年急速に蓄積されつつある.骨細胞が産生する FGF23に代表されるように,骨自身がホルモンを分泌して他の臓器の機能を制御する,すなわち内分泌臓器として機能していることも明らかになっている.臨床面でも,ビスフォスフォネートをはじめとした多くの骨粗鬆症治療薬が開発され,大規模な臨床試験から実際に骨粗鬆症性骨折の発生を予防する作用を有することが示されてきた.また Zoledronateによる HORIZON試験を代表例として,骨粗鬆症治療が生命予後をも改善することが明らかになってきた 1).誤解を恐れずに言えば,我々は「骨によって生かされている」のかもしれない.  さて本号では,骨恒常性の維持機構についての最近の話題に加えて,骨と他臓器との関係を,主として疾患との関係を中心に多くの執筆者に研究の現況を概説いただいた.以下に overviewとして本号の内容の一部を紹介するとともに,今後の骨代謝研究の方向性を筆者なりに眺望したい.