「はじめに」近年,フローサイトメトリーの進歩によって正常形質細胞と骨髄腫細胞の判別と分離が可能となり,高感度アレイ法や次世代シークエンシングによって多発性骨髄腫に関する知見が飛躍的に増大している1)2)。本稿においては,現在までに明らかにされている骨髄腫の発症と進展に係わる分子異常についてまとめ,疾患理解の基盤情報を提供したい。
「Ⅰ.多発性骨髄腫の発症機序」Monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)症例より,表面マーカーによって分離した正常形質細胞と骨髄腫細胞を比較解析することで,発症の初期段階に起こる異常として,①14番染色体長腕(14q)を含む染色体転座の形成,②高二倍体化(hyperdiploidy)の2つが同定された(図1)。前者は約50%,後者は約40%の症例にみられ,両方を同時に有する例が約10%ある。また比較的少数であるが,MGUSにおいて14q転座,特にt(4;14)やt(14;16)に加えて13番染色体の欠失を認めることがある。13番染色体にはCDK4/cyclin Dのリン酸化(不活化)標的であるRB遺伝子が存在しており,その欠失はcyclin Dの強発現を肩代わりすることになる。
「KEY WORDS」B細胞分化,染色体転座,高二倍体化,クローン階層構造