2010年12月に『前立腺癌取扱い規約第4版』が出版されてからすでに10年以上が経過しました。今回の改訂にあたり第4版を見直したところ,改めて前立腺癌の臨床診断,治療,病理診断における目覚しい発展・変化を実感した次第です。第4版からは,日本医学放射線学会の先生方に作成委員としてご参加いただいており,一層,放射線診断・治療の領域が充実したものとなっております。また第5版においては,前立腺癌における核医学診断・治療の発展を鑑みて,日本核医学会理事(当時,現理事長)である絹谷清剛先生に委員としてご参加いただきました。今回の改訂作業は,新型コロナウイルス感染症により多大な影響を受けましたが,ガイドライン委員会委員長の大山力先生と作成委員会の皆様のご尽力により,ようやく第5版を発刊できる運びとなりました。第5版では,規約としての根幹を保持しつつ,より利便性を高めるべく,実臨床に沿った内容を加えるよう心掛けております。
今回の改訂では,「第1部 臨床的事項」において,治療前の高齢者機能評価として初めてGeriatric-8(G8)を取り上げました。また,画像所見記載法のうち,MRI所見記載法では,マルチパラメトリックMRIの評価法として,PI-RADSⓇについての解説を加えております。骨転移所見記載法として,従来のEOD に加え,半定量評価法としてのBONENAVIⓇ,VSBONEⓇ BSIおよびGI-BONEⓇを紹介しております。リスク評価においては,NCCNリスク分類を2018年版に更新しております。治療方法記載法においては,骨治療を新たに加えました。
「第2部 病理学的事項」においては,組織学的分類はWHO分類第4版(2016年)に準じており,Gleason分類とともに,グレードグループ分類を併記することと致しました。また,今後の遺伝子解析の普及に備えて,組織の固定方法や標本の作製方法の解説を加えております。
「第3部 治療効果判定基準」では,PCWG2に加え,PCWG3について言及しております。QOL評価法においては,QOL質問票の紹介を簡素化し,SF-8,FACT-P,EPICについてのみ記しております。
『前立腺癌取扱い規約第5版』が,臨床に携わる先生方全員にとって道標となり,本邦データを世界へと発信する上での一助となることを期待致します。
最後に,本取扱い規約の改訂に際して,ご尽力いただきました3学会の作成委員会の先生方に深く感謝致します。
(野々村祝夫「第5版 序」より抜粋)
総説
目的
対象患者に関する規約
第1部 臨床的事項
A病歴記載法
B臨床所見記載法
C臨床病期記載法
Dリスク評価
E治療方法記載法
第2部 病理学的事項
A組織分類と診断基準
B前立腺材料に関する取扱いおよび検索方法
第3部 治療効果判定基準
A臨床効果判定基準
B前立腺癌組織学的治療効果判定基準