2018年9月・11月
わが国はその自然環境や地理的特性から「災害大国」といわれています。災害医療が目指すのは、通常医療が提供されていれば救命される「防ぎ得る災害死」を可能な限り減らすこと。多くの「防ぎ得た災害死」を残した阪神・淡路大震災の教訓から、災害拠点病院の整備や災害派遣医療チーム(DMAT)の設立など、さまざまな対策が講じられてきました。東日本大震災ではDMATの迅速な初動をはじめその教訓が生かされる一方で、支援の調整機能の在り方などの課題も浮き彫りになりました。2023年3月に岩手県盛岡市にて開催予定の第28回日本災害医学会総会・学術集会では、「災害保健医療の過去・現在、そして未来 “人材育成”」がテーマに掲げられています。大会長であり、災害医療の発展に尽力する岩手医科大学医学部救急・災害医学講座教授の眞瀬智彦先生に、東日本大震災の経験、そして災害医療を担う人材育成の試みについてお話を伺いました。
日本の災害医療は1995年の阪神・淡路大震災を機に大きく発展してきました。その後、2011年の東日本大震災では多くの場面でその教訓が生かされたものの、調整を担う本部機能やロジスティクスの強化、広域医療搬送、通信体制の確保など新たな課題も明らかとなりました。近年、全国各地で自然災害が頻発し、災害医療を担う人材のニーズはますます高まっています。さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に代表される感染症対応をも含めたより強固な災害医療の在り方が期待されています。限られた医療資源をいかに効率的に用いることができるか、いかにより多くの患者に最良の医療を提供できるか、そして災害医療が目指す「防ぎ得る災害死」を減らすために一人ひとりの医療者ができることは何か――。岩手医科大学医学部救急・災害医学講座教授の眞瀬智彦先生に、災害医療の歩みを振り返りながらお話を伺いました。
2022年2月・3月