アンチエイジングから降圧配合剤を考える
脳保護より
Anti-aging Science Vol.3 No.3, 21-25, 2011
はじめに
高血圧は脳卒中の最大の危険因子であり,脳卒中発症再発予防のためには確実な降圧を達成することが最も肝要である.降圧薬1剤では目標血圧値に達することが困難な場合が多く,今日使用可能なアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)と利尿薬との合剤,あるいはカルシウム拮抗薬との合剤は確実な降圧を達成するための処方薬として非常に有用である.本稿では血圧と脳卒中との関連を示した最近の研究を紹介するとともに,脳血管のなかでは最も高血圧の影響を強く受けると考えられる脳細動脈病変進展への炎症機転の関与ならびに脳血管内皮機能不全への高血圧の関与について自験データを紹介し,降圧配合剤を用いた脳血管保護戦略について述べてみたい.
Key Words
●脳卒中 ●脳微小出血 ●炎症機転 ●脳血管内皮機能 ●ポリピル
Ⅰ 脳卒中再発予防にはRAS阻害薬と利尿薬の併用が有用であることを示したPROGRESS研究
過去5年以内の脳卒中または一過性脳虚血発作症例を対象として,降圧療法の再発予防効果を示したPROGRESS研究1)では,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬と利尿薬を用いて降圧治療が行われた.ACE単剤治療群ではプラセボ群との血圧差は小さく(4.9/2.8mmHg),脳卒中再発予防効果も有意ではなかったが,ACE阻害薬に利尿薬を併用した群ではプラセボ群に比し12.3/5.0mmHg血圧値が低下しており,その結果40%を超える再発予防効果が観察された(図1).

またその後発表されたサブ解析では,追跡期間中の血圧値と脳梗塞,脳出血の再発リスクの関係が報告され,血圧は約120/80mmHg以上であれば低ければ低いほど再発リスクが低いことが示されている2).脳卒中初発予防においてもβ遮断薬に比しARBの有用性を示したLIFE研究3),脳卒中再発予防においてカルシウム拮抗薬とARBを比較したMOSES研究4)においても,ARB治療群において目標降圧を達成するために多くの症例で利尿薬が併用されていることに留意する必要がある.
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