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日内リズムとアンチエイジング

第2回 日内リズムと高血圧

桂田健一苅尾七臣

Anti-aging Science Vol.3 No.2, 71-78, 2011

1.はじめに
 血圧には日内リズムが存在し,健康な成人では夜間睡眠とともに血圧は低下し,早朝覚醒とともに上昇する.一般的には夜間血圧低下は迷走神経活性に関連し,覚醒後には迷走神経緊張が消失し,交感神経が活性化することで一時的な早朝高血圧が惹起されると考えられるが,血圧の日内リズムが形成される詳細な機序は不明である.

Key words
日内リズム,夜間降圧,血圧モーニングサージ,心血管リスク,臓器障害

1.はじめに(続き)

ラットを用いた実験では,体内時計の中枢が存在する視床下部視交叉上核(SCN)を破壊することにより,日内リズムが消失することや,血中カテコラミンの変動と相関することから,体内時計の分子基盤である時計遺伝子を介した経路や自律神経,圧受容体が関与することが示唆されている1)2).日内リズムの異常が時計遺伝子の異常によるとする報告3)がある一方で,血圧の日内リズムには生体時計のみではなく,光などの外部環境や活動性の影響(マスキング)が大きいとする報告4)もみられる.
 これらの血圧の日内リズムは,24時間血圧計(ambulatory blood pressure monitoring:ABPM)の使用により評価することが可能となった.わが国の高血圧治療ガイドライン(JSH2009)6)では,24時間平均血圧≧130/80mmHg,昼間血圧≧135/85mmHg,夜間血圧≧120/70mmHgをABPMでの高血圧基準としており,一般に夜間血圧は昼間に比べて10~20%低下する.この生理的な夜間降圧を示すものをdipperと呼ぶ.これに対して夜間降圧が10%未満のものをnon-dipper,このなかで夜間血圧が昼間血圧を上回るものはriserと呼ばれる.また10~20%程度の生理的な夜間降圧を超えて,昼間に比べて夜間に20%以上の降圧を示すものはextreme dipperとしてdipperとは区別される.
 夜間睡眠中に低下した血圧が早朝にかけて上昇する血圧モーニングサージについては,厳密な定義は確立していないが,ABPMでは早朝血圧から夜間最低血圧を引いた差(収縮期)などで評価される.
 これらの血圧の日内リズムの指標や評価が重要な意味をもつのは,この日内リズムが破綻した,夜間血圧が低下しないnon-dipperや,逆に夜間血圧が上昇するriserでは,正常リズムのdipperに比べて心血管イベントや高血圧性臓器障害のリスクが上昇すること,また,生理的範囲を超えて増強した血圧モーニングサージも心血管や脳血管障害のリスクとなることが明らかにされているからである.

2.血圧の内因性リズム

 最近Sheaらが,ヒトの正常血圧者での内因性の血圧の日内リズムについて,睡眠/覚醒リズムを通常の24時間周期とした群と,28時間周期および20時間周期とした群の3群間で比較検討した結果を報告した.この報告では,3群のいずれにおいても血圧は夕方から夜間にかけて徐々に上昇し,21時に最高値を迎えた.この内因性の血圧リズムは,他のコルチゾールやカテコラミンの血中濃度,心拍数,尿量の変動とは関連がみられなかった5).この結果からは,血圧の日内リズムの形成に内因性の要素は確かに存在するが,これまでに報告のある,朝方に増加する心血管イベント発症との直接の関連は薄く,食事・行動習慣や精神的ストレスなどの外的環境や未解明の血圧変動・調節を司る機構の影響がうかがわれる.

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