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アンチエイジングからスタチンを考える

心年齢に対するアンチエイジング

梶原正貴野出孝一

Anti-aging Science Vol.3 No.2, 19-23, 2011

はじめに
 心疾患はわが国において第2位の死因の疾病であり,加齢との密接な関係がある.高齢者の健康状態を高め,社会活動性を維持すること,すなわちアンチエイジングが重要な社会的課題となっている.
 加齢によって動脈硬化が進行することは既知の事実であり,高血圧,糖尿病,脂質異常症などの生活習慣病の影響も相まって動脈硬化性疾患は増加の一途をたどっている.動脈硬化による虚血性心疾患も患者年齢の高齢化が進んでおり,有病率も増加傾向である.一方で虚血性心疾患を含めた各種心疾患による結果として,心不全の症例が特に高齢者において増加し,疾病対策が社会的問題となってきている.つまり心年齢に対するアンチエイジングとして,心疾患への対策が重要性の高い問題と考えられる.
 一方でスタチンはコレステロール生合成経路の律速段階であるHMG-CoA還元酵素を阻害する高コレステロール血症治療薬として登場して以来,多くの大規模臨床試験において心血管保護作用を有することが明らかにされてきた.そしてその作用の一部はコレステロール低下作用に依存しない可能性が指摘され,pleiotropic effect1)として知られている.多くの実験研究によりスタチンが細胞内シグナルに直接作用し,多彩な細胞機能を修飾することが示されている.スタチンは血管内皮細胞・平滑筋細胞・外膜細胞といった血管壁構成細胞のみならず心筋細胞や血球細胞にも作用し,血管内皮機能の改善,平滑筋増殖抑制作用,血栓形成抑制作用,抗炎症作用などを有することが明らかになってきた.
 本稿ではスタチンによる心年齢に対するアンチエイジングの可能性に関して概説する.

Key Words
●スタチン ●活性酸素 ●抗酸化作用 ●血管内皮機能 ●心血管イベント

Ⅰ スタチンによる活性酸素の酸性抑制

 活性酸素種は,白血球はもとより内皮細胞・平滑筋細胞・外膜細胞といった血管壁細胞や心筋細胞においても産生される.生理的レベルの細胞内活性酸素種は,細胞内情報伝達を調節し細胞機能制御に重要な役割を果たす一方,過剰な活性酸素種の産生はDNA障害・細胞死を含む細胞障害活性を示すことが知られている2).活性酸素種による心血管細胞障害は動脈硬化を中心とする血管障害,心不全を中心とする心筋障害の発症・進展に重要な役割を果たすことが多くの臨床・基礎研究により示されてきた.
 白血球・血管壁細胞・心筋細胞において主要な活性酸素種の産生酵素はNAD(P)H oxidaseである.スタチンはコレステロール生合成経路においてHMG-CoA還元酵素を阻害することによりメバロン酸の合成を抑制し,その結果コレステロールの合成を抑制する.また同時に,farnesyl-pyrophosphate(FFP)やgeranyl-geranyl-pyrophosphate(GGPP)などのイソプレノイド中間代謝産物の合成を抑制する.イソプレノイド中間代謝産物はGTPase(低分子量G蛋白質) RasやRhoに脂質を付加することにより翻訳後修飾を行い,その局在および細胞内輸送を決定することにより活性化の調節に関与している(図1).

したがって,スタチンはGGPPの産生を抑制することによりRac-1のgeranyl-geranyl化を介した細胞膜移行による活性化を抑制し,その結果NAD(P)H oxidaseの活性を抑制すると考えられる.
 Maackらによって,心臓移植レシピエントから得た不全心筋において,NAD(P)H oxidase活性が亢進していること,Rac-1の活性化に伴う細胞膜への移行が充進していること,さらにスタチンの服用によりNAD(P)H oxidase活性およびRac-1活性化が抑制されることが示されている3).また,ラット新生児心筋細胞においてもスタチンはRac-1の抑制を介してアンジオテンシンⅡによる活性酸素種の産生を抑制することが示されている4).

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