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アンチエイジングからスタチンを考える

血管年齢に対するアンチエイジング

石井秀人吉田雅幸

Anti-aging Science Vol.3 No.2, 10-13, 2011

はじめに
 わが国でもメタボリックシンドロームや高血圧症,脂質異常症などによる動脈硬化由来の血管疾患が西洋諸国同様に多くみられるようになっている.血管疾患の予防には早い段階で血管の状態を知ることが重要であるが,血管の評価には血管造影などの観血的検査が必要となる.近年,頸動脈エコーによる内膜中膜複合体(IMT)の測定や脈波検査など血管の非観血的検査が登場したが,血管造影に比べるとわかりにくく,実感として動脈硬化の進展が患者に伝わりにくい面がある.

Key Words
●血管年齢 ●血管内皮機能 ●脈波検査 ●スタチン ●多面的作用

Ⅰ 血管年齢

 1998年頃から血管年齢という概念が使用され始めた1).この言葉の由来のvascular agingは,本来は血管の老化を意味し,加齢に伴う動脈の弾性線維の変性,減少や膠原線維の増殖とこれに続く動脈壁の肥厚,血管内腔の拡大などを生じる生理的変化を意味している.すなわち,特に動脈硬化のリスクファクターがなくても,加齢により血管年齢は上がっていくのである.しかし,実際に臨床の場で使用されている血管年齢の概念は病的変化を含んでいる.血管年齢の測定方法には指尖加速脈波法と脈波伝播速度法がある.前者は脈波の形が何歳に相当するかを検査するもので,後者の脈波伝播速度検査は血管の硬化度を同世代と比較し年齢で表現するものである.この方法での血管年齢は患者にとって実年齢との比較で動脈硬化が進行しているか実感しやすい利点があり,動脈硬化の早期発見と患者の治療に対するモチベーションを維持する効果がみられる.

Ⅱ エイジングと血管内皮機能

 前述のように血管年齢は病的変化がなくても加齢によって変化するため,加齢自体が独立したリスクファクターと考えられる.加齢による動脈壁の変化は前述の構造変化のみならず,血管内皮機能の低下も報告されている2).この血管内皮機能低下には炎症や酸化ストレスが関係しており,加齢に伴い内皮細胞におけるサイトカインや接着分子の発現が亢進し,炎症性細胞の接着が増加し内膜形成が促進される.また,酸化ストレスにより活性酸素産生増加と,内皮型NO合成酵素の発現低下によるNO産生低下により血管内皮機能低下が生じると考えられている.さらにアンジオテンシンⅡやエンドセリンなどの血管収縮に働く分子は増加するとされている.血管内皮機能障害を契機に動脈硬化が進展し,心血管障害を引き起こすことになる.この血管内皮機能障害は後述するコレステロール治療薬のスタチンや高血圧治療薬のAT1受容体拮抗薬(ARB)などが改善する作用をもつ.これらの作用は本来の薬剤の作用以外の効果により直接的に内皮機能改善をすると考えられており多面的作用と呼ばれている.

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